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教員の小西雅子です。
昨年の九州南部や千葉における大雨被害が記憶に新しい中、グローバル社会の課題を学ぶ「環境と防災」の授業では、“命を守る”講義を展開しています。地球温暖化が進む中、洪水被害は一層深刻化していきます。
特に東京などの都市はたいてい海のそばにあるため、海抜ゼロメートル地帯が広がっています。たとえば東京の荒川や江戸川など大河川の下流地域では、いったん洪水となると、水が1~2週間にわたって引かないことが予測されています。2019年5月に、東京都江戸川区が「ここにいてはダメです」と書かれた水害のハザードマップを出して区民に大きな衝撃を与えました。江東5区の海抜ゼロメートル地帯では、巨大台風が都心に上陸し、荒川と江戸川が同時に決壊した場合には、約250万人が浸水被害を受けると想定されています。
そのためこういった地域では、自宅近くの避難所に逃げても危険なのです。隣の区や県まで避難しなければならず、しかもそれは洪水が予測される1~2日前に避難しなければなりません。なぜならば周辺の100万人以上が同時に避難する上、動く手段である公共交通機関を担う方々も当然ですが避難しなければなりませんので、当日では逃げ遅れる可能性が高いからです。
この授業では、地球温暖化の科学を学んだあとに、実際に台風による大雨に備えて、2日前、1日前、当日にそれぞれ何をするか、といったタイムラインに沿って、避難計画を立ててもらいました。実際に江東5区内に住む学生もいて、全員真剣です。
「自宅の水害ハザードマップを見たら、1週間以上水が引かないことが分かってとても怖くなり、真剣になった」
「両親と話し合って、静岡の親せき宅に避難することにした。親が千代田区に勤務しているが、250万人も同時に避難したら、千代田区も満員になると思うので、静岡まで行くことにした」
「逃げ遅れた場合も考えて、近くの高台にあるスポーツセンターをチェックした」
「避難袋をすべて更新。特に保冷が必要な治療薬を服用している家族のために、保冷剤も入れた」
「自宅を補強する。自営業であるため、機械などが水濡れしないように準備する」
「1~2週間滞在する前提で、祖父母は埼玉の親せきへ、自分たちは千葉の親せきへ避難する手はずを整えた」
全員で話し合うと、さらなる知恵が生まれ、どんどんそれぞれのタイムラインは充実していきました。これからの時代は、残念ながら地球温暖化の進展とともに、洪水水害は拡大していきます。「これまでなかったから」というのは通用しません。
1~2日前に隣の区や県まで避難する、という今までにない形に、大人たちは腰が重い場合もあるでしょう。しかしこれだけ新しい科学の知見を持ち、災害への備えを充実させていく学生たちは、自分と家族のみならず、周りの命をも守るリーダーに育っています!
きらきら自分たちの考えを発表する学生たちがとても頼もしく、私の方が感動するひと時でした!
皆さんもぜひ大雨災害対策、今一度考えてみてください。
参考になる冊子「江戸川区防災ハンドブック」
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/documents/519/sassi-ja.pdf